虫の歩行4 虫の序破急

虫の歩行は、実は衰弱体への変成技法である。
衰弱度が序破急に応じて深まっていき、
ついには衰弱の極に達するアンチクライマックスの序破急を持つ。
これを忠実にたどることで誰でもが衰弱体に到達できるように
手を取るように配慮されている。
これは未来の舞踏家に向けた、
衰弱体への変成のための土方からの遺言なのだ。


<序>虫が這う


<序> 虫がからだを這う


1.右手の甲に一匹の虫
2.左首筋からうしろへ降りる二匹目の虫
3.右の内ももから上がってくる三匹目の虫
4.左肩から胸を降りる四匹目の虫
5.五匹目 自分で知覚

<序>
たった一匹の虫が手の甲を這う、かすかなクオリアから始まる。
そしてそのクオリアがじょじょに増大していく。
自分の意志で動くのではない。
何ものかによっていやおうなく動かされていく。
ここには<序破急>の序の極意が秘められている。


<破1 虫が群れになる>


<破>1 虫が増え群れに変成する

6.あっちも こっちもかゆい その場にいられない かゆさに押し出される
7.あごの下 耳のうしろ ひじのうしろ 膝のうしろ ベルトのところ に
五百匹の虫
8.目のまわり 口のまわり 耳の中 指の間 すべての粘膜に五千匹の虫


<破1: 破の序>
虫の数が増大していく。
群れとなった虫は、一挙にすべてを消尽しつくす怪物に変容する。
群れの恐ろしさは、秋田農村の出身である土方の骨身に刻み込まれていた。
量の変化が質の変化に転化する瞬間の<破>を見つけよ。
―それが土方からのメッセージだ。


<破2 虫が内臓を喰う>


<破>2 虫が体内に侵入し、内臓を喰う。
実体的なからだを失う。


9.髪の毛に虫
10.毛穴という毛穴に虫
11.その毛穴から 内臓に虫が喰う 三万匹


<破2: 破の破>
さらに、虫は体表から方向を転じ、一挙に体内に侵入し始める。
このときすでに虫はただの虫からもっと恐ろしい別ものに変容している。
きみは突っ立ったまま、内臓が喰われ尽くした死体に変貌していく。
転換に転換を重ねていくのが<破>の見せ場だ。
からだの闇をさまざまなものに変化しつつ渉猟し、
予測できぬ転換のなかにからだごと踊りこんでいけ。


<破3 虫が空間を喰う>


<破>3 虫がからだの外の空間を喰う
さらに、空間を喰う虫がほかの虫に喰われる。
世界が根本的に変容する。


12.さらに侵食し 毛穴を通って外に出る虫 身体のまわり 空間を虫が喰う
13.さらに空間の虫を喰う虫

<破3: 破の急>
転換に次ぐ転換の果てに、もっと巨大な転換が起こる。
虫は空間を食い始めるのだ。
きみの世界が侵されていく。
世界の壊滅に立ちあい、壊滅の中心に立ち尽くせ。


<急 衰弱体の完成と、異界転生>


<急> その状態がさらに喰われ、衰弱体を完成する。
空無な突っ立つ死体となり、異次元に転生する。


14.その状態に虫が喰う
15.(樹木に五億匹の虫――中身がなくなる)
16.ご臨終です (意志即虫/物質感)」


<急>
さらに最終の変幻は、いままでの状態すべてが別次元のクオリアに襲われ消滅する。
衰弱体の完成だ。
きみは命がけで突っ立つ死体となった。
ここにはもはやきみの居場所もない。
異次元を開畳し、その異世界に転生するしかない。
どんな異様なみじめな存在に成り果てても生きていける、
命の舞踏を創出するのが舞踏家の仕事だ。

―――
ここで土方は、世阿弥が発見した5段構成による<序破急成就>を示している。
だが、ここまでではただ、舞踏の入り口である衰弱体への変成を終えたばかりである。
ここから先がきみの仕事だ。
きみ固有の踊りの<序破急>を成就すること。
なにを一番したいのかい? 生命に耳を傾け、きみ自身の生命の必然をつかまねばならない。
ただのテクニックとしての<序破急>ではない。生命の必然としての序破急を成就すること。
命がけでなければそんなものは見つからない。
それが土方からの遺言だ。


関連技法

虫の歩行 1
虫の歩行 2
虫の歩行 3
序破急
秘膜
秘膜の深さ
秘膜各層の由来
秘筋
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