<序破急>成就 |
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世阿弥は言う。 「万曲の面白さは、序破急成就の故と知るべし。 もし、面白くなくば、序破急不成就と知るべきなり。 恐らくは、なおこの心、得ること如何(いかん)。 奥蔵心性を極めて、妙見に至りなば、これを得べきか。 (どうすれば、この心を得ることができるのか。 心の奥底にひそむ根源の性まで極め尽くして、不可思議の悟りを得れば、 序破急の要諦を体得しうるかも知れない。)」 『拾玉得花』 <序破急>成就とは何なのか。 これまでの項では、<急>に至る道を探り続けてきた。 世阿弥の言う、揉み寄せの<急>、 世界チャンネルを開いて異次元を開く異界転生の<急>、 他界からのまなざしをこの世に差し向ける臨生の<急>、 幾万回でも踊れる命に至る<急>などだ。 これらは<急>に至る道ではあるが、 <序破急>成就に至るのは、さらにこれだけではすまない。 からだの闇を探りぬいて、もっともか弱いサブボディを見つける必要がある。 それがない限り、踊りがまだ人間サイズに留まっている。 人間の枠内では、見つかった<序破急>も中途半端なものに留まる。 人間などにはなれなかった、もっともか弱く、醜いサブボディがからだの闇で泣いている。 それを掘り出し、サブボディにまで育て上げる。 そして、そのか弱いサブボディに問う。 「どうしていままでからだの闇に潜んでいたのかい?」 「この世ではきみは生きることを許されなかった。 ではどんな世界なら生きていけるのかい?」 それは、もっともか弱いサブボディの終いの非望をかなえることだ。 どれほど醜く、壊れかけて、瀕死の心身でも生きていけるような場を見つけ出すこと。 まずは、きみのサブボディの踊りの<序破急>のなかに場を見つけること。 もっとも強いサブボディの後か、前か、 転換はゆっくりか、急転か、じょじょにか、どんな変容のテンポでか、工夫しぬく。 そして、もっともか弱いサブボディの最適の居場所が定まり、 最適の<序破急>のなかで登場できる方法が見つかったとき、 ようやく<序破急>全体が最弱のサブボディの微弱な震えから、 先に<急>の項で述べた、世界を転倒し、開畳した異世界に転生していくまでの ダイナミズムを備えた<序破急>がみつかる。 天地の間のすべてを踊り、さらに異次元を開畳する きみ固有の<序破急>を発明することができる。 それが<序破急>成就なのだ。 常にからだの闇のもっともかすかな声やふるえに耳を澄まし続けること。 それが<序破急>成就に至る、日ごろの心がけだ。 |
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