秘密関節

人間の日常体が忘れ去ったものはあまりに多い。
尾は使われなくなって退化して久しいが、いまだに尾の神経は健在だ。
想像上の尾をイメージするだけで、動きが随分助けられる。
胸鎖関節、仙腸関節、手足の第四関節なども
近代の「人間」のからだから忘れ去られた関節だ。
これらの関節をゆっくり開いたり閉じたりねじったりしながら、
そこにどんな味わい深い体感が封印されているかを味わう。
そこに長年せき止められていた原始的な体感が別の部位へじょじょに流れ出す。
からだじゅうのクオリア流がやがてひとつながりになって感じられるようになる。
それらはごくごくかすかな体感だが、
意識を止めさえすれば十分くっきりと感じ取ることができる。
それらのごくかすかな体感クオリアを味わう。
自分にとって新鮮な体感、
あるいは何かしら自分の深部に響くものを感じたら追いすがる。
そこが微細覚をひらいていく坑口だ。
その坑口を降りていくと、原生体や異貌体など
主要なサブボディ十体創造の豊かな坑道につながっている。

胸鎖関節



両鎖骨を少し前に動かす。ほんの少し胸がしぼまる。
さらに前に動かす。胸が閉じてきて息苦しくなる。
骨格の布置が変わり、内向的な自分が出てくる。
さらに胸を閉じる。石のように外界に対して閉じた自分に出会える。
両鎖骨を後ろに動かす。外向的な自分がでてくる。

両鎖骨を上に動かす。失敗をしたときに肩をすくめる自分を思い出す。
もっとあげると、首がなくなる。亀のように首をすくめた自分がいる。
両鎖骨を下に下げる。首が長くなる。鳥や馬のように首を動かす。

両鎖骨を外に広げる。胸鎖関節が広がって鳥のような自由な胸になる。
両鎖骨を内に狭める。胸鎖関節が固定される。
さらに閉じると、胸がなかった蛇や魚の時代の骨格に近づく。
背骨だけで魚のように動く。

仙腸関節



両骨盤を前に動かす。骨盤が閉じ、胸鎖も閉じる。骨格の布置が変わる。
アルマジロのように用心深い自分に変成する。
両骨盤を後ろに動かす。胸鎖も拡がり、外交的な人格や尊大な自分が出てくる。

両骨盤の上部を近づける。膝が萎まり、X脚になる。
尻が後ろに突き出、胸鎖もしぼまる。腕を限界までねじる。
奇妙な布置の異貌の自己に出会える。
両骨盤の下部を近づける。骨盤上部が拡がり、妊娠中の母体の体感を味わえる。
胎児を腹に大事に抱えて歩いてみる。母とはなにかが少し分かる。

両骨盤を仙骨から離す。
骨盤間の距離が最大になったとき、分娩中の母体になる。
誰もが一度は通ってきた胎道を思い出す。
両骨盤を仙骨に近づける。骨盤が固定される。
さらに近づけると、骨盤のない蛇や魚のからだになる。
背骨だけで蛇や魚のように泳いで見る。
陸の上に打ち上げられた瀕死の魚になってのたうってみる。
それは土方巽の「病める舞姫に書かれている土方自身の舞踏のレッスンだ。

手足の第四関節




手足の第四関節を三次元方向にゆっくり動かす。
手指の親指の第3関節は誰もが動かすことができる。
他の四指の第4関節を、三元方向に動かす。
物理的にはほんの1ミリか、それ以下のナノメートルしか動かない。
それでいい。
そこを動かそうとすると、退化しつつあるが
まだ存在する過去の生物段階の動きがほとばしり出てくる。
鳥や爬虫類や昆虫の動きが埋まっている。
あるいはからだのやみ深く封印されていた
not-meや、影や、解離されていた異貌の自己が顔を出す。

手首、足首の八つの小骨が踊りだす

さらにその付け根には手首の八つの小骨がある。
八つの小骨が三元方向に六道ゆらぎで動き出し、
他の部位はそれに従う、
手首、足首に秘められていた微細なクオリアが花開く。

からだのあちこちから動く


胸鎖や仙腸などのからだの中心部からのセンターリゾームの動きから
指先、つま先から動くエッジリゾームの動きを切り替える。
脚底から波打って動く植物的なボトムリゾームと、
頭から動く獣のようなトップリゾームを切り替える。

・顎、舌、口、喉、顔、首を三元に解く

人間としての知性的な顔立ちを保つために
日常体の顔は左右対称の位置に固定されている。
下顎の位置をあちこち極限まで変えれば、
異貌の自己が現れる。
舌の動きも解放する。
さまざまな生き物の舌になりこむ。
舌は舌の付け根から内蔵につながっている。
内臓から舌の付け根を動かしてみる。
さまざまな生き物の体腔音が噴出する。
違ったリズム、異様な呼吸で声を出してみる。
その声が異次元に導いてくれる。

・目を斜め・三元にただよわす

目もまた、水平左右対称の日常体の黙契から解き放つ。
斜め上下にすばやく動かすと、
ひょうきんな人格、ずるがしこい奴、
妙なことを思いつく発明家に豹変する。
右目はロンドン、左目はパリを見るロンパリの目を創造する。
目の裏側を見つめる。
闇の光彩を追う。
異界との間でゆらぐ目になる。
他界からのまなざしで見つめる。
きみ自身の他界からのまなざしを発明する。
それは舞踏にとって欠かせぬ創造だ。

見知らぬ自分に出会ったら、じょじょに友達になっていく。
時間がかかる異貌の自己もいれば、すぐサブボディの一員になる副人格もいる。
異貌体は原生体と並んでサブボディ舞踏十体の中の
最も重要な部分を占める。
そこは創造の尽きせぬ泉だ。
じっくり時間をかけて育てていく。



参照隠れクオリア異貌の自己

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