探体法17  異貌の自己

異貌の自己への坑道

からだの闇にはおびただしいほどの、
異貌の自己が詰まっている。
ユングは影と呼び、サリバンはnot-me、
一般的にはサブ人格、副人格と呼ばれている者たちだ。
中には違った生き物の形をしているのもいる。
クラゲのように漂っていたいやつ、
アメーバのようにとろけたいやつ、
……誰の中にもそういう微細な衝動がある。
彼らをいかに引き出すか。

いくつかの有力な坑道が見つかっている。
今週は生徒とともに、この坑道を掘り進んでいる。
生徒たちは毎日驚くほど多彩な異貌の自己を掘り出している。

1.隠れ関節を開く

人間の日常体には忘れられて使っていない
隠れ関節がいくつかある。
仙骨と骨盤の間の仙腸関節、鎖骨と胸骨の間の胸鎖関節、
手足の指の第四関節、顎の関節、
そして、それぞれの脊椎間の関節などである。
これらの忘れられた関節の間には、
やはり忘れられた隠れ人格や
隠れ生物のクオリアが封印されている。
小さい頃に一度だけ使って、
大人たちから選択的非注意のまなざしで扱われたため、
萎んでしまったnot-meたちである。

これらの隠れ関節を開いたり、閉じたりして
普段の位置よりずらしてやる。
他の力を受けてこれらの関節が動かされるクオリアを感じてもいい。
骨盤や胸を閉じたりすぼめたりすると、隠れていたサブ人格や、
サブ生物が息を吹き返してくるのが感じられる。
かすかなかすかなクオリアでしかないが、
そのクオリアに触れたら、従い、乗り込み、増幅していく。
次の端目や、息声と連動して増幅するのがいい。

2.端目を開く

目を斜め上下にすばやく動かす。
なにか素っ頓狂なことを思いつくやつ、
ひょうきんなやつ、など
なにか見知らぬ人格の気配が感じられないだろうか。
目の端っこで見つめる。
黒目ではなく白目で見つめる。
極端な上目遣い、下目遣いをしてみる。
狡いやつ、人目を盗んで生きているやつ、
見下しているやつ、などなど別世界の住人が姿を現しだす。
じっくりと流し目を贈る。
体の動きと反対方向に目を流す。
不思議な情動が湧いてくる。
目を上に浮遊させて、白目になる。
死者の目になる。
異界の目でこの世を眺める。
さまざまな速度でこれらの目を生きてみる。
かならず、異貌の自己に出会える。
その異貌体になりこむ。

3.顔つき、息声を変える

1.2と連動して、普段はしない息遣いをする。
はあはあ、ぜいぜい、ひゅうひゅう、むぐむぐ……
人間ではない異貌の自己の息遣いがよみがえってくる。
口元もひどく歪む。
思い切って異貌の顔になりこんでいく。
妙な声が出てきたら乗り込んでいく。
異貌の自己はいつも人間とは違った声で違った歌を歌っている。
一度始まればいつまでも続く。
楽しくなるに違いない。
それはずっと昔に置き去りにされてきた自分なのだ。
からだの闇にかがみこんだままの異貌の自己を掘り出してやれ。
これは十体の中の<異貌体>にいたる練習の一環となる。
世界中でここだけでしか掘っていない深層坑道だ。

異貌の自己は何人もいる。
何人と出会えるか。
何人と踊れるようになるか。
それが自全の旅なのだ。



| コメントを書く |メールを送る |サブボディ舞踏スクールホームページ |  

←BACK ■ NEXT→