探体法12  軋みと軋み返し


ある日土方巽が、「軋む」というのはどういう動きだろうねえ?」
とふとつぶやいたと、土方の奥さんの元藤さんから聞いたことがある。
土方はいつも寝床の中で骨を鳴らしていたそうだ。
舞踏の修行は四六時中続く。
眠りの中、夢の中でも探求し続けている。
むしろ、意識がないときにこそ探求は冴える。

わたしも長い間、軋むとはどういうことだろう? と思い巡らしてきた。
最近からだの細胞ひとつひとつの命になりこみ、
細胞や細胞で起こっていることに耳を澄ますことができるようになって
はじめて軋むということがどういうことか、少し分かってきた。
からだが何かわけのわからない力を受けて歪んだとき、
命は自然に小さい痙攣や、無意識の寝返りをうって、その歪をただそうとする。
からだの60兆の細胞たちは、いつもそのようにして共振パターンを変化させている。
その細胞たちの精妙な営みは意識にとっては、
意識できない無意識域に周縁化されてしまっている。
だが、意識を止め、下意識のからだ、サブボディになると如実に感じられる。
眠りの中で起こている、軋みと軋み返しの体感と動きを感じてみると
それがとてつもなく味わい深い細胞たちの間の
共振パターンの変化によって起こっていることが分かる。
それこそ命の営みなのだ。
そして、その共振パターンの微妙な変化をコントロールすることによって、
ありとあらゆる命の変容が可能になることに気づいた。

以下の練習は、人間である自分という粗大な感覚を脱いで、
細胞レベルにまで耳を澄ますことができるようになった人に勧められる、
もう一段階微細さの階段を降りる修行だ。


1.軋み

静かに横たわり、自分のからだの各部位が
直方体の組み合わせでできていると想像する。
足、下腿、腿、骨盤、腹、胸、肩、上腕、前腕、手、首、頭などが
すべてマッチ箱のような形をしている。
そのマッチ箱がなにか見知らぬ力を受けて微妙に歪み、軋むのを感じる。
ぴくっと、ごくごく微細な軋みが生じる。
からだの各部位で、その軋みを感じてみる。


2.軋み返し

やがてその軋みの強度や規模を増幅してみる。
すると自然に軋みに抗って、反対方向への動きが生じる。
命が無意識裡に自然調整する軋み返しの反応だ。
さまざまな強度、速度、規模、リズムで軋みと軋み返しを味わう。


3.眠りのからだになる

眠っているときのからだを思い出す。
眠りの中で、命は日常のからだに起こった軋み歪みをただして調整している。
ごくわずかピクリとする動きを思い出し、それに従う。
ごくかすかな調整や大きな寝返りの中で起こっている命の軋み返しを思い出す。

見た夢を思い出したら、夢の中でからだに起こっていることを感じる
視覚映像を思い出さなくても、夢を見ているときの体感を思い出しそれに従う。
夢見のからだ、ドリームボディのなかでもからだの軋みや違和を調整している。

眠りの中で自分の癖やこだわりやこわばりがほどけていく感覚を思い出す。
癖やこわばりを見つけたらそれを増幅して軋ませ、そして軋みを解く。
起きているときのからだよりも、眠っているときのからだのほうが命に近い。
命の生の動きがでてくる。
眠りのからだ(スリープ ボディ)は命の踊りのかけがえのない先生なのだ。
眠りに学ぶことだ。
舞踏の師はきみのすぐそばにいらっしゃる。





※歩行法の「ひとの歩行(ヒューマン ウオーク)」、「ヒューマノイド ウオーク」、「崩壊体の歩行(コラプスド ウオーク)」に続く。



●関連技法
軋みと軋み返し
石の歩行
山の歩行
ヒューマン ウオーク
ヒューマノイド ウオーク
コラプスド ウオーク

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