2017-2

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ボトムレスネイチャー  サンテリとコボディ
 

2017年12月11日

第15回舞踏祭の収穫その1

微細リスニングと図地兆リゾーミング
(からだの内外のかすかな気配に耳を澄まし、じわじわと変容する技術)

この記事は今年の成果を踏まえ、来年以降の方向を探ろうとするものだ。

生命共振クオリアが時空を超えて共振する性質に基づいて、
生命共振舞踏のなかで、わたしたちは無限に
人間概念の拡張
空間概念の拡張
時間概念の拡張

を踊ることになる。
その技法が
微細リスニングと図地兆リゾーミングだ。

日常意識の思考や判断を止め、サブボディ(下意識のからだ)モードになり、
耳をすますと、からだの内外にごくごく微細なクオリア共振が起こっていることに気づく。そのクオリアに身を委ねて動かされるのがサブボディ共振舞踏だ。
踊りや演劇の空間では、図と地の相互転換が起こる。
通常のダンスや演劇の中で、演者と観客の共振において、焦点が当たっている部分が図であり、非焦点化されている部分が地となる。(図1)


図1 図(Picture)と地(Ground)は焦点の当て方によって転換する。

だが、見えないものとの生命共振を踊る舞踏においては、可視的な空間だけではなく、不可視の背後世界との共振がもっとも大事な要素となる。
舞踏手が不可視の微細な背後クオリアに耳を澄まし、そのクオリアとの共振が徐々に濃度を増し、ついには物理的な動きとなって現れるプロセスを微細に見せる技法が
図地兆リゾーミングである。(図2)


図2 舞踏では物理的な図と地にとどまらず、不可視の背後世界の微細な生命共振の兆し(Signs)に耳をすまし、変容する。


リゾーミングとは、日常世界における脳心身の幻想のツリー構造、すなわち、意識が身体をコントロールするという二元論的階層秩序を脱ぎ捨て、
脳心身を百千の部分に細分化し、任意の部分が任意のクオリアと自由に連結分離しつつ共振するリゾーム状のからだに変容することからはじまる。
そして、任意の部分が不可視の背後世界のクオリアのかすかな兆しと共振を始め、それが増幅されてついには物理的なからだの動きになって現れるまでの潜在的なプロセスを踊るのが
図地兆リゾーミングである。

これは舞踏独自の技法であり、古典ダンスや現代ダンスにない特徴である。
土方巽はこれを彼独自の「
Xによる還元とその再生」という変容技法として確立した。Xには任意の要素を代入することができる。
たとえば、Xに重力を代入すれば、からだが徐々に重くなる、あるいは軽くなる。サイズを代入すればだんだん小さくなる、あるいは大きくなる。
X
にはあらゆるものを代入できる。性を代入すれば男性の体から男性性が削減され、じょじょに女性に変容する。知性を代入すればじょじょに獣じみてくる。密度を代入すればじょじょに固形化し石になる。あるいは逆に液状化し、気化していく。などなどである。
土方巽はこのX還元技法を駆使して最後のソロ「静かな家」を踊った。
また、最後の著書『病める舞姫』において、生命が不可視の背後世界と共振する事例を無数に「痴呆になる寸前の精密さで」記述した。

これらの技法によって、空間概念は、
日常的に縛られているただの物理的3次元空間から、
クオリアが共振している非二元かつ多次元空間へと拡張される。
時間概念は、過去から未来へ線形に進む物理的時間から、
過去も未来も交錯するクオリア共振の時間へ拡張される。
これらの多次元時空を踊ることよって、人間概念もまた、
日常の規範に縛られたからだから、
宇宙の中のものすべてに無限に変容しうる多次元共振体へと拡張される。

今期の共振塾では、この微細変容技法や図地兆リゾーミング技法をシェアしようと目論でいたが、途中で
<ドリーミング・シェア><リゾーミング・シェア>などの新技法が発見され、それに注力したので十分には展開できずに終わり、来期の課題として持ち越された。
ただ、踊り手に意識化されていたかは定かでないが、アレックスとサンテリのデュオ「下方へ」や、サンテリとコーボディによる、「ボトムレスネイチャ-」において、この微細生命共振技法による静かなしかし無限の変容の片鱗を垣間見ることができた。まだその入り口に達したばかりだが、今回の舞踏祭のおおきな収穫の一つである。

来期2018年はこの微細リスニング、
図地兆リゾーミング技法やX還元技法の身体化を期初から準備していくつもりだ。それが塾生全員によって血肉化するまで共有することができれば、これまでにない舞踏を共創することが可能になるだろう。

 
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