サブボディ共振塾ジャーナル
Butoh Festival Himalaya
"Ning Tub Ling" Fabricio
2011年2月16日

ニントブリン ファブリシオ

ブラジル出身、ドイツ在住のファブリシオは、これで3回目のヒマラヤになる。
ノマディック大学のヘッドとして、これまでもさまざまな障害を持つ人と色を使ったワークで交流してきた。
ヒマラヤ舞踏フェスティバルの最終日は、彼のガイドで共振塾から車で1時間ほど離れたところにある
チベッタン障害者の家「ニントブリン」を尋ねた。
驚いたのは彼らの屈託の無いホスピタリティだ。
隔てのない笑顔と、すぐに一緒に踊り出す親しみにあふれたからだの共振で迎えてくれた。
感動した私は昼休み、芝生で昼寝している間にまどろんだ。
そのまどろみの中で、十年前、ハンガリーのダウン症児らとひと月過ごして
一緒に踊りを創ったときの心の震えがよみがえってきた。
そのとき味わったと同じ、ピュアな生命の共振を今感じているのだと気づいた。
私のからだの中で、この記憶は長い間どこかに埋まってしまっていた。
おそらく学校建設の際に陥った神経症と、解離性同一性障害のストレスの中で
記憶が封印されてしまっていたことに気づいた。
その失われていたこころとからだの震えがまざまざとよみがえってきたのだ。
そうだ、これこそ求めている純粋な生命共振の雛形なのだ。
世界中がこんな共振に満ちるまでわたしは頑張ろうと思っていたのだ。
そんな初心をこの日の彼らは思い出させてくれた。
わざわざドイツからフェスティバルに駆けつけてくれたファブリシオに感謝する。
帰りのバスの中、生徒たちや、ボランティアで参加した各国の人々も、
みんなが胸にきていた。
おそらく一生でそう何度も味わうことのないピュアな生命共振に触れて、
この日の体験が心の宝物となったのだ。
これからも毎年私たちはここを訪れるだろう。
ニントブリンは、大袈裟な言い方をすれば世界生命共振革命の原点なのだ。




 Snow Lion/ Dorjee
2011年2月3日

闇に跳ねるスノーライオン

ドルジェは、15歳の時、母と弟とともに冬のヒマラヤを越えてチベットからダラムサラに亡命してきた。
その後、チベット難民学校の生徒であったころから自分ひとりで踊りはじめたという。
からだの闇に踊らずにはいられない鬱屈したエネルギーがいっぱい詰まっている。
無闇やたらに飛んで、跳ねて、ドスンと落ちる。 
とてつもなく頑丈な骨格を持っているので、それでも傷めたことがない。
昨年、突然入学してきたときには、それだけだった。
その後、サブボディ技法を学ぶ中で、
意識を止め、からだのの中のもっともかすかなクオリアに耳をすますことを学んだ。
それで彼の踊りはごく微細なクオリアから、激しい踊りまで
ダイナミックレンジが大きく拡がった。
そして、他の人と共振することも学んだ。
舞踏フェスティバル最終日のこの日は、他の踊り手全員が即興で共振した。
詰めかけた観客たちもさまざまな手作り楽器や思い思いの体腔から出てくる音などで共振した。
彼は放っておけば7時間でも8時間でも踊り続ける体力を持っている。
だが、はじめての観客にはついていけない。
終わろうとしない彼の踊りがすこし重複が混じりだした頃合いを見計らって、
すこしずつ照明を落とし始めた。
だが、彼の踊りはそれに抵抗するようにますます激しさを加え始めた。
最後は真っ暗になった舞台で、跳ねては落ち、飛んでは倒れる最も激しい踊りを繰り広げた。
ビデオにも写真にも映らなかったけれど、それが最も胸に来た。
機械には記録できないけれど、居合わせた観客はみな深く動かされたことと思う。
舞踏とはこんなものだ。
ただ生命だけが共振できるものとなる。
それは舞踏の宿命だ。
舞踏の精髄は写真やビデオには決して映らない。
映っているのはごく一部の粗大な動きに過ぎないことをご理解ください。










2011年2月1日

新旧の生徒への手紙 2 冬場の調体

冬場はからだが固まりやすい。
冬場向けの調体で、からだを常にいい状態に保つように心がけてください。
去年までの探求で、土方舞踏が無限の変容性を持ち得た秘密が、
気化体の創出にあったことが判明した。
よりくわしく言えば、気化するからだと、
物質化するからだを自在に往還する技法の完成によるものだ。

「死者は静かにしかし限りなくその姿を変えるのだ。
彼等は地上のものの形をほんのふとした何気なさで借用することも珍しくない。」

土方の舞踏譜の要点であるこの文章は、
魂や精霊、死者、石、船、獣、植物などへ、自在変容する極意を刻んでいる。
不可視のからだへ気化し、そこからなにものかへ自在に物質化するからだになる。
今年の授業ではいままで十分に学べなかった気化体と各種物質化したからだを
自在に往還する透明共振体への変成に重点をおく。
この冬場の調体は、一見不可能な変成に思える気化するからだを
身体的に準備するものだ。

とくに今年の新入生、および日々変化する共振塾の現在を共有したい人は
いまから準備をしてください。
心身が根底から変化するにはとても長い時間がかかるものだから。


1.仙腸(仙骨-腸骨)関節をゆるめる

寝ている間に、仙腸関節は固まってしまう。
毎朝必ず仙腸関節をほぐすことからはじめるのがいい。
臥位、座位、立位のいずれでもよい。
寒ければ寝床の中でやってもいい。
とにかく仙腸関節を極限までずらし、ゆるめ、軋ませる。
ゆっくり息を吐きながら片方の骨盤を前後、左右、上下の三次元方向のうち
ひとつの方向に極限まで動かし、息を吸い止める。
そしてハァーッと息を吐きながらストンと元に戻す。
これを十分にやった日は、からだが別人のようにゆらぐ。
仙腸関節の硬結がとれると人間ではなく、生き物のからだになる。
生命としてゆらぐことが楽しくなる。

2.仙腸から背骨へ、全身の秘関へ

仙腸関節からさまざまなクオリアがゆらぎ変容する動きが始まる。
思いつく限りの多様な質で、方角で、仙腸から動き出し、
背骨へ、足や手の秘関へ、自在な動きを他の部位に伝えていく。
さまざまな速度で、さまざまな動きで。
からだ全体にとてもきもちのよい体感が満ちて
自在に変容流動するようになるまで続ける。

3.気化するからだへ

臥位や座位から立位へ、仙骨からゆらぎながら移る。
物質のからだからゆっくりと気化する。
ひだまりに出て、目ではなくからだの皮膚で日光を感じる。
目を閉じ、ゆっくりからだの向きを変えると、
どちらの方向が太陽なのか、からだで分かる。
自分ではなく、細胞生命のかすかな感受性に成り込む。
指の間をひらくとそこの皮膚が温度や風を感じているのがわかる。
からだを腰で折り、頭を下げてしっぽに天からぶら下がっている姿勢から
ゆっくり起き上がりながら重さに聞く。
光や熱や重さに細胞生命として耳を澄ましていると、
じょじょにからだの周りに幾層もの見えない皮膜があって
さまざまなものと共振ている命を感じられるようになってくる。
物理的なものだけではなく、忘れていた記憶、夢、想像などが訪れればそれについていく。
ふとした思いつき、勝手に出てくる動き、などにしたがうだけでいい。
夢や記憶や思いつきは物質ではない。
生命が共振しているクオリアだ。
それは時空を超えてあらゆるものと共振している。
からだの闇とはこの共振するクオリアの海のことだ。
気化するからだとはこの無限変容するクオリアに命を預け、
不可視の透明共振体となる技法である。


毎日、より微細なクオリアに耳を澄ましていく。
生命が共振するクオリアが時間や空間を超え、
あらゆるものとかすかに共振していることが感じられるようになるまで続けてください。


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February 2011
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