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第8章 生への志向性としての生命 



生命だけが持つ特性とは何か。
長い間それを探ってきた。
ひとつ動かしようのない
生命が持つ特性を見つけた。

生命とは生きようとする志向性だ。

自同律に見えて不満なのだが、
この自同律にさえ見える生への志向性こそ
生命の特質なのだ。

あらゆる命あるものを見ていると
みな生きよう生きようとしている。
インドには特有の虫が多い。
小さいものからさそりの類まで
無数の虫がわが家に棲みついている。
出会うたび彼らが生きよう生きようという
志向性を持っているのが感じられる。

雨季が終わって生物の生態系も大きく変わった。
コケや羊歯は休眠に入り、
変わって地衣類が元気を出してきた。
彼らはあまり水分が多すぎるのが苦手らしい。
とびきり新鮮なからだを樹木の肌に拡げている。

私の師の中の師である粘菌先生は
ヒマラヤではまだ見つかっていないが
かわりに地衣類が豊富だ。
おそらくもっとも強い生命力を持っている一群だろう。

彼らから感じ取れる最大のものは
生きようとしているクオリアだ。
そのしたたかさ。

こんなしぶとい連中がいていくれたからこそ
転変地変が相次いだ原始地球のうえでも
途切れずに生き延びてきてくれたのだと思う。
地衣類は菌類と藻類の共生体だ。
彼らの生き方の発明も40億年の生命の歴史の中では
特筆されるべき創発だったのかも知れない。

なぜ、たんなるひもの共振パターンの中に
ある日突然生命のような志向性が持ったものが
生まれたのか。
不思議なことだが、それを問うても意味がない。
どんなに不思議なことであろうとそれは現に生まれ
ここに40億年も生き延びてきて現存しているのだ。

無限にあるひもの共振パターンのなかに
ある日突然自己維持と創発の志向性をもったパターンが生まれた。
その事実をただ受け取ればいい。
わたしはこの間、何百時間も
はじめて生命が生まれた瞬間のひもに成りこむ
想像力の訓練をつんできた。
それは実存主義のいう<投企>という行為に似ている。
何かよくわからないがこちらのほうが生への方向だろうと感じられる方向へ
ひも自身が身を投げ出すように共振パターンを投企することによって
生命という自己の構成素を自己産出するシステムが成り立った。
最初の生命はすでにそのとき
こちらの方向が生きていく方向だという
生命のクオリアをキャッチし、
そこへ共振パターンの身を投げかけていくことによって
生命をつむぎ始めたのだ。
この生への志向性なしに生命はない。

現在の宇宙はビッグバン以来多様性を増してきている。
当初は一様なひも振動しかなかった。
ビッグバンの数ナノ秒後に
いち早く重力が分化した。
そののち相次いで電磁力、強い力、弱い力が生成していった。
光や水素の原子なども生まれてきた。
それにしてもそのころは随分単様な宇宙だったろう。
銀河が生まれ、星の中で重い原子が生成していった。
それらが組み合わさって無数の分子が生成してくるのは
そのずっと後だ。
そしてあるとき自己維持し、自己創発しいていく
生命のようなものさえ生まれた。

生命は宇宙ではじめて自己維持と自己創発を志向する
志向性を持つ存在となった。

ひも共振の中の微細なクオリアを
自己の体内にしみこませて記憶し、
生命の維持創発に利用することができるのも
生命だけが持つ特性だ。

最初に生まれた原始細胞は、その表皮で
自己の生成に有用なものとそうでないものを
区別する原初レセプターを持っていただろう。
今日の細胞が持つものよりはるかに
原始的で単純なものだったろうが
この原初レセプターで外界の物質やエネルギーが
自己維持に有利なひも共振パターンか
そうでないかをふるいにかけていたのだ。

原初生命は出会ったクオリアのことごとくを
細胞内に記憶していった。
光に出会えばそれを受けて変形する
「光受容たんぱく質」を創発した。
酸素に出会えばそれを呼吸に利用する
プロテオバクテリアが生まれ、
やがてそれは真核細胞と共生して
細胞呼吸器官であるミトコンドリアが創発された。
このように多様な働きをする生体内分子や
器官がつぎつぎに生まれ分化してきた。
その多様化はいまなお続いている。

生命界に限らず、宇宙にはビッグバン以来
どんどん多様化していく大きな傾向がある。
これは宇宙法則のひとつなのだろうか。
おそらく、宇宙の膨張局面においてだけ成り立つ法則だろう。

宇宙はこれまで何度も収縮と膨張を繰り返してきた、
ビッグバンとビッグクランチを繰り返し、
現在の宇宙はビッグバンからの膨張局面にあるというサイクリック宇宙論を
日本の宇宙物理学者川合光、二宮正夫、福間将文たちが提唱している。
この理論に従えば、私たちが暮らしているこの宇宙は
30〜50回目の宇宙ということになる。
30〜50という数字は超ひも理論を用いて
宇宙のエネルギーの合計量から計算によって導かれたものだ。

わたしもそうだろうと随分以前から思っていた。
現在の宇宙の膨張局面はいつか終わる。
収縮局面に転じた宇宙のことは想像するだに恐ろしい。
日々多様性が減じ、どんどん単調化していくのだ。
異端者が狩られていくナチスの時代のような宇宙となる。

私たちはいまの多様性を謳歌できる宇宙に生まれて幸いだ。
多様性を肯定すること。
多様性を妨げようとするあらゆる力に対抗すること。
それだけが大事なことだと思われる。

イキルンダ、ミンナ!
特別変な特異性や、
希少な遺伝子を持っていればいるほど
価値がある。
命の多様性をさらに豊かにしていくために
君の特異性がとても大切なのだ。
君が倒れたら、
ひとつの特異性が消える。
それは生命にとって大きな損失なのだ。
君が今死んだら、
君のようなやつはもう二度と現れないに違いないから。

生きて生きて
生き抜いてくれ。







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