舞踏論   土方巽に捧げる

第226章 生命の祖型へ、母型へ、元型へ


フクシマの衝撃で始まった今年の共振塾。
十人の生徒はいきなり生命共振の深淵に巻き込まれた。
先週末はプールの底で、フクシマから漏れでた毒の水に侵される瀕死の生命となった。
この衝撃がもたらしたものは何か。
それは自分ではどうすることもできない地震や津波や原発事故、戦争のような
異常事態に巻き込まれたときに否応なく起こる
生命の細胞レベルでの変化をからだで体験したことだ。
土方が舞踏の根底に据えたのも多次元かつ非二元の生命共振の深層クオリア群だ。
それらは非二元なので分類不可能だが、あえてむりやり分類すれば、次のような構造を持つ。


元型(想像)
水の神、風の精、地母・大母、精霊、妖怪、キメラ、

祖型(情動)虫のおびえ、鳥のおびえ、おそれ、めまい、

母型(体動)ふるえ、すくみ、ねじれ、よじれ、こわばり



元型も祖型も母型も同じ意味だ。
一つのものの違った側面を強調するために異なる言葉を使っている。
大災害に見舞われたときは、細胞生命に保存された40億年間の生命記憶=内クオリアが
一挙にぶり返し、生命を深層かららっしさる。
これらが緊密にからまりあい、切り離すことのできない
一つの生命現象であることがからだでわかる。
ユングは学者だからこのうち、目に見える元型イメージだけに着目し研究した。
だが、踊り手はこれらすべてを自分のからだ全体で受け止める。
フクシマに共振してこの二週間無我夢中で踊った共振塾生は、
生命の舞踏が出てくる深層の現場を体験したのだ。
頭やことばで考え出した踊りなどではない。
自我や自己の表現などではない。
からだの踊り場にからみつく、こうした生命のふるえやおびえから
のっぴきならない創造が、必然の動きが立ち上がってくる。
それこそ土方が探求した生命の呼称で呼ばれうる舞踏なのだ。



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