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第9章 宇宙史と生命



これまで、地球上での生命発生に
焦点を当てて取り組んできた。
今回は、視点をさらに遠く、
全宇宙史というパースペクティブにおける
生命発生の特異性に焦点を当ててみよう。
今回も導きの糸となってくれるのは
ひも理論である。

ビッグバン当時は、
すべてのひもがプランク長さという
宇宙最小の微細な11次元の内でのみ振動していた。
すべての次元はプランク長さのうちに閉じ込められていたのだ。
だが、ビッグバン以降、11次元のうち、
三つの空間次元とひとつの時間次元がわずかに拡大しはじめた。

ひとつひとつのひも振動の三次元への空間的拡大は
ごくごくわずかずつであったとしても、
全宇宙のひもがそろって拡大することによって
宇宙全体の膨張をもたらしてきた。

そして、それらの拡大したひも振動は、
その共振パターンの差異に応じて
つぎつぎと4つの力や、各種の素粒子を生み出してきた。

三つの空間次元の拡大のほかに
ひとつの時間次元が拡大してきたことは
どう捉えればいいのだろう。

時間次元が拡大するとは、
今刻々と新しい時間が生まれているということだ。
それは、空間次元が拡大し、
刻々と新しい空間が生まれていることと対応している。

だが、残り七つの微細次元では
時も空間も生まれていない。
すべてが宇宙創成時と同じままなのだ。

いいかい、君の想像力を
極限まで羽ばたかせてくれ。
微細次元には時も空間もない。

それは非空非時の次元である。
クオリアはそこに生まれた。
もともと非空非時の生まれなのだ。

宇宙の拡大に連れて
奇妙なことが起こりだした。
ひもはもともと一本のひもだから
そのひもの共振パターンの一部は粗大次元に拡大し
共振パターンの一部は依然として微細次元に閉じ込められたままである。
たとえば、粗大次元に拡大した共振パターンが
光を生成する共振パターンに変化したとしたら、
その変化はかならず、微細次元での共振パターンにも
何らかの影響を与えるはずだ。
目に見える変化は起こらなくても
ひも自身には微細な変化が起こっていることが
感じられるくらいの微細な差異が生まれる。
その微細な差異こそクオリアなのだ。

光を生成するひもの共振パターンは、
粗大次元では光そのものの共振パターンを示し、
微細次元でのわずかな変化が光のクオリアを生んだ。

生命とは自らを構成するひも振動のクオリアを捉えうる存在だ。
生命体が光を受けると、
生命体を構成する原形質のうち
光受容たんぱく質が変性する。
その変化によって生体は光を認知する。
光が反射や透過によって去った後も
わずかな変化が
光受容たんぱく質のひも共振パターンのなかに残る。
それを生体は光の記憶として認知する。
また、光によって熱せられたとすれば
生体は自らが少しだけ動きやすくなることによって
ぬくもりのクオリアを知る。
自らのからだの性質や動きの変化そのものによって
クオリアを認知した。
このように、原初のクオリアとはみずからの
からだの状態や動きの変化として捉えられていた。
体感と動きがもっとも原初的なチャンネルであるゆえんである。

今日でも私たちは自分のからだの一部を
陽だまりの中に置いてみることによって
自分のからだに起こる原生的なクオリアの変化を味わうことができる。
日光によって暖められた細胞は
わずかだが明らかに動きやすくなる。
そのほんの少しの活性化を
私たちは捉えることができる。

宇宙創成以来、ひも振動は共振パターンを
限りなく多様化し続けてきた。
さまざまな物質やエネルギーを次次と生み出してきた。
そして宇宙創成以来、100億年あまり経ったとき、
その無限のパターンのひとつとして、
みずからのひも共振の微細変化をクオリアとして捉え、
それを自らの持続と創発に役立つほうへ
亢進させていくことのできる生命が発生した。

生命とは宇宙ではじめて、クオリアを捉え、
それを自己維持と発展に利用できる存在として生まれたのだ。





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