●生命はいかにクオリアをとらえてきたか
今回は、粗大な4次元に
物質的身体をもって存在するわれわれ生命が、
どのようにして、物質的存在ではないクオリアを咸知し、
それを使うことができるのかを考察する。
(クオリアとは生命がからだで捉えている
物事の質感・体感・実感の総称だ。)
ここまで、クオリアは微細な7次元に折りたたまれた
微細次元のなかで振動しているひもの共振パターンによって
生成すると仮定して、論を進めてきた。
今回はこの仮説をさらに緻密化する。
ひも理論によると、
ひもは粗大な4次元時空と、
微細な7次元を自在に往還して振動している。
ひとつひとつのひもにとっては、
粗大次元と、微細次元というような区別はない。
ただ、11次元を超高速に振動している。
●微細なひも振動を直接とらえる原生感覚
原始生命に近い下等動物の場合は、
原形質そのものがクオリア咸知器官となる。
まわりの空気温度が高まれば、
それにつれて細胞内の温度も高まり、
細胞を構成しているすべてのひもの振動の
粗大次元分の振動要素は拡張し活性化する。
そして、ひもの微細次元分の振動要素にも
それが如実に伝わる。
自らの振動のクオリアが変わったことを知る、
それが原初のクオリア咸知であった。
初期のクオリア咸知とは
ただ生命体のからだが動きやすくなって
動きがスムーズになったり、
その逆が起こったりすることそのものであった。
動きが変わることと、
その動きのクオリアの変化を捉えることは
一個二重のことであった。
運動と咸知が未分化だったところから生命は出発した。
高等動物では、
この微細次元のクオリアを捉える咸知器官が
ニューロン(感覚神経細胞)として特化してくる。
ニューロンはその先端の咸知部分だけが、
クオリアに応じて変化する。
生命がとらえるクオリアは多岐にわたる。
電磁波では、生物種によって
低周波の長波から赤外線、可視光線、
紫外線、X線、ガンマ線までを利用する。
音波も生物によって超低周波音から、
一般に人間が捕らえうる20ヘルツから
2万ヘルツの可聴域の音波、
そしてこうもりなどが利用する超音波まである。
化学物質は気体のものは嗅覚を通じて鼻や皮膚から、
液体のものは水溶液を通じて
舌や皮膚によって咸知される。
動物には特殊な固有の触覚器官が発達したものが多い。
また、からだに加えられる加速度は
平衡感覚として耳で捉えられている。
皮膚や皮下脂肪層では
圧力や張力の変化を捉える触覚、圧覚、
温度感覚、振動感覚、皮膚痛覚などが捉えられる。
内臓で捉えられるクオリアには圧力、張力、温度、
CO2やO2などの化学物質、発痛物質がある。
さらに、筋肉や骨格、関節で捉えられるクオリアには、
四肢の相対位置、運動、関節の角度などをとらえる運動感覚、
重力、加速度を捉える振動感覚、
化学物質による疲労感覚、
発痛物質による深部痛覚などがある。
筋肉にかけられたわずかな牽引を捉える原生感覚もある。
(この原生感覚を示す英語はoriginal senseであるが、
これに対し日本の医学界では固有感覚という
間違った訳語が与えられている。
これが生物が原生段階から持っていた
自分のからだの状態を知るもっとも原生的な感覚であることが
理解されていない)。
また、血液成分のわずかな変化を捉える
血液成分感覚をつかさどる化学受容性ニューロンも幾種かある。
さて、高等動物では以上のように
さまざまに分化しているが、
下等動物ではこれらは分化せず、
先に述べた原生感覚のなかに包含されている。
そして、これらの原生感覚は
原形質そのものが自らを構成するひもの
多次元的な振動の状態を直接察知することによって、
あらゆるクオリアを一気に得ているのだと考えられる。
のちにそれが各種の感覚細胞や神経細胞に分化されていった。
これは近年の粘菌に対する研究で、
粘菌が特殊な感覚器官などないのに、
多種多様なクオリアを咸知していることが
明らかにされてきた。
粘菌研究者の上田哲夫(北大)によれば、
「
粘菌は紫外線や青色光を避けようとし、
赤色光や遠赤色光を受けると形態形成を始める。
粘菌には光を見分ける少なくとも
4つの光受容系があることがわかっている。
味覚もあり、苦いものは避け、
糖とかアミノ酸のような美味いものには寄って行く。
嗅覚もある。粘菌には五感が備わっていると言ってよい。
粘菌は、全身が感覚器官であり、
運動器官であり、情報器官なのだ。
」
●クオリアの記憶が原形質に残る仕組み
粘菌のからだはアメーバ状の原形質だけでできている。
そのなかに、これらのクオリアを咸知する仕組みが存在する。
私が上のような原生感覚に対する推論に達したのは、
それ以外に解釈のしようがないからである。
原形質は、外部のクオリアの変化により、
自らが直接変化を受ける。
熱を咸知するときは、みずからも熱せられ変化する。
原形質を構成するひもは、
熱によって振動や振幅が活性化される。
この変化のうち、
ひもが微細次元で振動しているクオリア部分の振動が、
実際に熱が去った後にも、痕跡のように残される。
微細次元のひも振動には慣性のような性質があり、
一度起こった振動の変化は
ひも振動自体にいつまでもわずかな痕跡を残す。
実際の熱は去ったのに、
熱せられた記憶が原形質にまだ残っている。
これがクオリアの記憶が原形質に残る根拠である。
このわずかな差異を咸知することによって、
生命体がクオリアの記憶を
生存のために利用することが可能になった。
●クオリアは各種の伝達媒体を乗り換えて伝わる
人間のような高度に発達した
ニューロンネットワークを持つ高等動物の場合は、
実際に熱によって、粗大な変化が起こるのは、
外界に接した皮膚の冷温感覚細胞の
受容器官(センサー)部分だけである。
受容細胞は受け取った刺激を電気信号に変換して、
次の第一次感覚ニューロンに伝える。
このときの変換とは、
実際の受容細胞の原形質の一部であるセンサーが
温度によって拡大し、
ひも共振を活性化させたときの、
微細次元分の振動のみを
次の電気信号を生むひも共振パターンに伝える。
感覚ニューロン内を、
その微細振動によるクオリアを乗せた電気信号が伝わる。
次の第二次感覚ニューロンとのつなぎ目は
ご存知のようにシナプスという間隙となっている。
このシナプス間隙を、
電気信号から微細次元でのクオリアが伝達された
情報伝達物質の分子が実際に移動する。
そしてその微細次元でのひも振動の信号は、
次のニューロンのレセプターに伝わる。
そしてそれがまた電気信号に変換されるという
プロセスを交互に繰り返して、
大脳皮質の第一次感覚野から、
第二次感覚野,
そして、高次統合野のニューロンに伝わっていく。
このとき実際にひも共振の間で伝達されていくのは、
当初熱せられた空気中のひもが行っていた
振動の微細次元分のクオリアのみである。
図式化して言えば、空気中では、
水素分子を構成するひもが熱せられ、
11次元のひも共振パターンを活性化させた
――それが感覚受容細胞のセンサーのひもの
11次元の振動に引き継がれる――
そしてそれが電気信号に変換された以後は、
粗大次元で電気を生成するひも振動は、
その微細部分にのみ
熱のクオリアによる共振パターンが受け継がれる――。
クオリアを伝える伝達媒体の物質や
エネルギーの形が温度から、電気信号へ、
電気信号から化学分子へといくら変化しても、
そこに搭載されたクオリアの微細振動だけは
ずっと同じものが伝達されていく。
これが、さまざまに伝達媒体が変わっても
ひとつのクオリアが変質せずに伝達されていく仕組みである。
こうして、脳細胞の体性感覚野や、
高次野のニューロン自体は熱せられることなく、
定温を保ったまま空気音の上昇を告げるクオリアのみを
ひも振動の微細分として咸受し認知するのである。
これを<クオリアの乗り換え仮説>と名づける。
ひとつのクオリアを人間の乗客とたとえると、
人間が乗り物を車から船、飛行機へと乗り換えていっても、
人間その人はクオリアとしてそのまま運ばれ伝達されていく。
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