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2 すべては共振している

 


●意識は共振を知らない

あらゆる物理現象が、振動するミクロのストリング(ひも)の共振パターンの変化によることが、最先端の物理学であるひも理論によって明らかにされつつある。

だが、物理学者は、われわれ生命体が、その生命特有のクオリアを通じて、世界と共振している存在であることを知らない。

それを明らかにすることが私の役割となった。一介のヒマラヤの舞踏家であるに過ぎない私の。世界の誰もがこの役割を引き受けようとしなかった。

すべては共振している。

まずこれがすべてだ。

そのことはからだを動かしながら、この世のあらゆるものと関わって生きていると、おのずからからだで分かる真実に過ぎない。それどころか、ヒマラヤの鷲でも、猿でも、山に住むヒルトライブの人たちでもみんなそんな共振に気づいている。当たり前だから誰もことさら言葉にしないだけだ。

私が開いているサブボディ学校ヒマラヤへくれば、誰でもそのことをからだで感じることができるようになる。では、なぜ、文明社会で生活している誰もがこんな単純なことに気づかないのだろうか。

答えは簡単だ。意識にとらわれているからである。意識は共振を知らない。

私も日本や諸外国で50年間暮らした。その間は、すべてが共振してることになぞ、まったく気づかなかった。意識にとらわれていたからである。意識はエゴにとりつかれている。文明社会にいると、意識優先のモードで生きていることが、全員にとって当たり前のことになってしまっているので、誰も意識にとらわれていることの弊害になぞ気づかない。もともと意識優先の意識モード以外のありかたがあることなどにも、気づかないのだ。

だが、近代西洋社会が一般化させたそのあり方以外に、ついこの間までの日本や、いまでもアジアや、南アメリカや、アフリカなどの先住民文化を大事にして生きている人々は、アニミズムやシャーマニズムなど、近代的な意識優先の意識モード以外のこころのありようを保存して生きている。

そういう地域を研究している文化人類学者の多くは、意識優先の意識をもって各地に「研究」に出かけ、意識優先の意識に映ったものだけを捉えて「研究」している。そんな中にも例外もいる。レヴィ・ストロースや、そのもっとも優れた弟子の中沢新一は、人間の意識が近代西洋型の意識優先の意識モードだけではないことを明らかにしつつある。それがどんなに重要なのかは、ほかの意識優先モードの意識にとらわれている人々には理解できないことだから、十分に評価されることがないが。

また、伝統的な瞑想や宗教の世界にいる人々は、もともと意識優先の意識が今日のように世界制覇する以前の時代に生まれた精神的伝統の中にたゆたっている。そこでは、だから、今日の意識優先の意識が世界を制覇したという問題がどんなに世界をゆがめているのかについての、鋭い感受性を持つことができない。意識優先の意識以外の意識状態がただの普通の状態であった時代の意識を保ってそのまま瞑想を続けているからである。極少数の東西の時空を行き来している人が意識優先の意識の危機に気づいている。

高度情報社会の中で50年生き、そして、そこでの息苦しさからヒマラヤに脱出した私は、二つの異質な世界を行き来し、その間に横たわる深い謎に取り組んできた。

深い謎とはなにか?

現代の近代社会に住むすべての人を覆っている意識優先の意識はある重大なものを覆い隠している。そのためにすべてが見えなくなってしまっているのだ。

ある重大なものとは、最初に書いたことだ。

すべては共振している。

われわれ生命体とは、その生命特有のクオリアを通じて、世界と共振している存在である。

クオリアを感じるということ自体が共振現象である。共振とはどちらかが吹っかけて起こるものではない。意識が勘違いしているような自動詞と他動詞の違いなどないのだ。共振はすべて、両者同時に起こる。どちらかが働きかけ、どちらかが働きかけられということがない。これが共振原理だ。意識にはとても捕らえにくいことだが、これがこの世で起こっていることの真実の姿なのだ。主体的意識によって動いているのではなく、私たちはただただ無意識裡にクオリアを感じてしまうという形で、世界と自己が自他の区別もなく共振している存在だ。

このことが、意識優先の意識にとらわれている限り覆い隠され続ける。もともと、生命体は言語意識など以前にクオリアで世界と自己を捉える存在であった。アメーバのような単細胞生物でも、からだで感じ取る、世界と自己との関係についての体感情報をクオリアとしてもっている。そのクオリアを通じて世界と共振しているのが、生命体としての基本的なありようだ。私たちの脳の神経細胞も、ひとつひとつはアメーバか粘菌のような単細胞生物である。ニューロンは彼ら一人一人が感じるクオリアによって世界と共振して生き、活動している。私たちが感じる意識とはそのクオリアによる判断を統合することで得られている。だが、意識はそのことを忘れ、あたかも自分がすべてを判断しているかのように錯覚している。途方もない幻想に捕らえられ一種の催眠状態にあるのが、現代の意識優先の意識の真の姿である。

意識を止めること。そうすれば一切が明らかになる。意識優先の意識によって、どんなに重大なことが感じられなくなってしまっているか。

からだをきもちよくゆらいでいる状態にし、意識優先の意識を止めて、下意識と意識が等しくつりあってゆらゆらゆれている状態をたもつ。その状態では下意識とからだは別物ではなく、ひとつに融合している。(以後この状態をサブボディモードと呼ぶ。) これはほんの少し瞑想の訓練をつめば誰でもすぐに体得できる状態である。意識優先の意識以外の状態があることなど信じず、そんなものがたとえあっても、近代以前の野蛮状態に過ぎないと決め付けて自分の意識優先の意識へのとらわれを守ろうとする頑迷な人以外は、だれでも移行できる。(恥ずかしながら告白すると、私自身この頑迷さから50年間も逃れることができなかった。だから今のあなたがすぐ意識から逃れられなくても気にやむことはない。いつか気づく日が来るものだ。)

 

●意識を止め、サブボディモードに移行する

 

静かな一人きりになれる場所を見つけて座る。             

朝一番がいい。あぐらなど楽な姿勢で座って、ゆっくり腰を回す。

両足を前に投げ出す姿勢や、横に大きくひろげるのもいい。いろいろ変えていくといい。静かに長い呼吸をしながら、骨盤からゆっくり回す。

しばらく続けていると、一番気持ちのよい速度が自然に定まってくる。

みつかったらその気持ちよさに全身をゆだねていく。

突然その速度を最低限のゆっくりとした速度にまで落とす。      

そしてからだの体感に耳を澄ます。

きっと、からだの中にえもいわれぬ気持ちよい快感の流れが漂っていることに気づくだろう。

それが感じられたら、下意識モードの入り口に達した証拠だ。    

おめでとう。きみは、意識優先の意識という催眠状態から醒めることができたのだ。

 

 


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